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トラベルライターによるホットな現地情報
<No.9> タイ-
ピピ・レ島
映画「ザ・ビーチ」の本当の舞台とは?
タイ南部に秘密のビーチを訪ねる
「まだ誰にも知られていない、秘密のビーチがある」。そういう話を聞けば、レオナルド・ディカプリオ主演の話題の映画「ザ・ビーチ」でなくても、ソソラレルものがある。しかもそのビーチは絶壁で海から隔絶されていて、絶対に外からは見えないとなると、なおさら好奇心を刺激する。けれども映画を見て、そのイメージをロケが行われた現実のビーチに求めるのには、無理がある。ロケ地となった、タイのプーケットの南に位置する断崖絶壁の無人島のピピ・レ島は、10年ほど前まではまだ訪れる人も少なかったが、現在ではプーケットやクラビーなどからのオプショナル・ツアーのデスティネーションとして人気があり、多くの観光客で賑わっている。
三谷 緑
(トラベルライター)
舞台となったピピ・レ島のマヤ湾は、緑のジャングルに抱かれるように真っ白な砂浜が広がり、エメラルドグリーンの海の色とのコントラストはまさに「南国の楽園」のイメージそのものである。けれども現実の世界では、その美しいビーチにはパラソルが立ち並び、売店まであってビールも売られている。さらに無人島のはずなのに売店の裏手に家を建てて、その一家がすでに住み着いている。またマヤ湾の入り口付近は珊瑚礁が広がり、熱帯魚の泳ぐ絶好のシュノーケル・ポイントとなっているが、そのためにいつも10数隻のボートが停泊している。人ごみで混雑するプーケットとは違う、誰もいない手付かずの美しいビーチを求めてやって来ても、そこに見出すのはすでに観光地と化したビーチである。せめて、バーができて一日中音楽を流すような事態には陥らないことを、願うばかりである。
映画では、マヤ湾の入り口は映さずに、ビーチは海とは岸壁で隔てられた内側にあるように見せている。でも実際に、そんなビーチが存在するのだろうか?
答えは「存在する」である。
ではそのビーチへは、どのようにしてたどり着くことができるのだろうか。海からはそのビーチの存在は分からないため、映画や原作では主人公たちは反対側のビーチから山を越えて「秘密のビーチ」を発見する。しかし「秘密のビーチ」も密かに海と繋がっている。映画では海側に洞窟があり、その奥に縦に穴が開いていて、湾内に出られるようになっている。一方、原作では岩壁に海とビーチ側を結ぶ海中洞窟があり、そこを潜って行き来できるようになっている。そして私が訪れた「ビーチ」は、海側の絶壁の下に穿たれた真っ暗な洞窟内を泳いで、小さなビーチにたどり着く。
話はちょっと逸れるが、映画で見た限りでは、ビーチと海は直接繋がっているようには見えなかった。とすれば、そこは海ではなく塩湖ということになるのではないだろうか。だとすると、そんなところで鮫に襲われるのはおかしいから、画面には描かれていなくても、やはりどこかに海中洞窟があると考えた方が納得がいく。テーマとは直接関係のない事だから、省略したのだろうか。ちなみに原作では、鮫に襲われるのは海に出て魚を獲っていたときと設定されている。
さて、私が訪れたその「ビーチ」は、タイの南部、アンダマン海に浮かぶムック島にある。ピピ・レ島と同じような断崖絶壁が連なる海岸線には、波の浸食によって出来た洞窟がいくつも口を開けている。その中のひとつ、見逃してしまいそうな小さな「モラコット洞窟」の奥に、そのビーチはあった。
救命具を身に着け、ボートから降りて洞窟内を泳いでいくと、やがて光が届かなくて真っ暗になる。案内人の持つ懐中電灯の小さな灯と声を頼りに進んでいくと、やがて前方に出口の光が見えてくる。洞窟の長さは約80メートルということだが、暗闇の中ではとてつもなく長いようにも感じられ、光が見えたときにはホッとした。洞窟の出口から波打ち際までは、潮の関係もあるが7、8メートルくらいだろうか。長さは数10メートルほどの小さなビーチである。
砂浜に寝転ぶとぽっかりと区切られた空が見える。四方をぐるりと絶壁に囲まれたこのビーチは、いわば洞窟の底にあるようなもので、陽が翳るとたちまちひんやりとした空気が肌を覆う。ちょっと灰色がかった湿った砂浜の前には、地平線へと続くエメラルドグリーンの海の代わりに垂直に切り立った壁がそそり立ち、その岸壁の下に洞窟が三角の口を開けている。潮の干満はあるものの、寄せては返す波の運動のないビーチは、どこか異次元の世界を思わせるような不思議な感覚を呼び起こす。
といっても、ここもすでに「秘密のビーチ」ではない。ムック島にはモラコット洞窟の反対側の海岸に小さな漁村があり、バンガローもある。ピピ・レ島ほどではないにしても洞窟には毎日観光客が訪れ、特に週末はタイ人観光客が10数人のグループでやって来る。やがてこの小さくて静かなビーチも、人で溢れかえることになるのだろうか。
でもここ以外にも、「秘密のビーチ」は、きっとまだどこかに存在するに違いない。自然は時として、人間の予想をはるかに超えた造形を造り出すものだから。
ムック島情報
タイの南部、トラン・プロビンスに位置。西海岸の港町カンタンより、一日一便のムック島行きのボートが出ている。ムック島の桟橋はモラコット洞窟とは反対側の海岸の漁村にあり、桟橋から徒歩10分くらいのところにコ・ムック・リゾートがある。宿泊料は250バーツと300バーツ(シャワーとトイレ付き)。
桟橋から1時間ほど歩くと、白砂のファラン・ビーチがあり、そこにはチャーリー・ビーチ・リゾートがある。バンガロー、ダブルサイズのテントともに200バーツ(シャワーとトイレは共用)。桟橋からファラン・ビーチまでの定期的なボートはない。
モラコット洞窟に行くには、リゾートからのツアーを利用する。
または、ピピ島の南に位置するランタ島からも、モラコット洞窟を含む3つの島を訪れるシュノーケル・ツアーが出ている。ランタ島へは、ピピ・ドン島から高速フェリーで1時間。クラビーからもランタ島行きのフェリーとミニバスが出ている。
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